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敦が演じる“暁”という少年は、人世界に異次元から来た鬼の眷属という設定であり、
そのビジュアルの銀髪や宝石のような双眸というカラーリングも、
どういう偶然か、敦が生来持っていたものと重なっており。
配役を決めた担当によれば、
姿は二の次、痩躯なのに驚くべき級の格闘力や体捌きを発揮していた、
スーツアクターや格闘系の作品での活躍という伝手から見出されたそうで。
染めたわけでもないのにこの髪色や不思議な瞳の色合いなどの合致は、
最終的な選考でさすがに物を言ったとも聞いている。
「性格的なところはちょっとずれてるもんなぁ。」
「そうでしょか?」
勝ち気でやや豪胆なという性格の設定が、本人の素顔をよく知る仲間内からすれば意外な役柄。
無邪気で屈託がなく、柔らかい物腰をしていて人あたりもいい。
上からの覚えもよければ幼い子にも受けがよく、
むしろ、こんな業界には危ないくらいに純真無垢で、
中也が早めに見出してその保護下へ納めたのがよくも間に合ったと、
芥川も太宰もその辺りの馴れ初め話を全部聞きつつ ぞっとしたのだとか。
「まあ…ひところに比べれば
人権無視とか尊厳無視とかが横行するよな、
人買い世界っぽい無茶苦茶な売り込みも なりをひそめちゃあいるっていうが。」
スカウトなんて上辺だけで、ちょっと油断すると実は水商売の事務所でしたとか、
権力のある親父たちに身を任せないと旨味のある仕事なんてもらえないとか、
そんな下衆な話を、問題視するどころか手っ取り早いと信奉している大馬鹿な事務所もなくはなかったそうで。
(※このお話はあくまでもフィクションです。あしからず)
タレントどころか、政財界のレセプションへ送り出されるコンパニオンにされましたなんて
悲しい身に落とされたお嬢さんたちも少なくはないらしく。
(※このお話はあくまでも……。)
そうと知らず片棒を担がされていましたというのもシャレにならないため、
オーディションを構える側もまた、いろいろと慎重にならざるを得なかったりしたのだとか。
「劇団が専属の団員しか使わないのは、
そういった混乱が起きないようにって保険にもなってたんだろうな。」
スマホの普及などによりネット環境が低年齢層へも広がり、情報過多時代とされつつ、
巧妙な輩は後を絶たないし、そこを危ぶんでのSNSの年齢制限というのも判らないでは無い。
大人でさえAIやフェイクニュースにいいように踊らされているのだ、
活字化や映像化されているもの、支持者の絶対数が多いものへの信奉が集まるのは仕方がないのかも。
“…話が逸れとるぞ。” (あ、すいません。)
最近だからかどうなのか、子役もなかなか出来た子が多く、
お行儀もいいし、大人のお邪魔はしない、扱いやすい子が重宝されるのは世の常で。
私立の学校の“お受験”ではないが、
そうだった方が採用されやすいなんてな情報も恐らくは飛び交っているのだろう。
とはいえ、要領よく態度を取り繕いすぎるのは却ってぼろが出たときに反発を持たれる。
そんなことくらいは周囲もきっちりと言い聞かせているのだろうし、
結果オーディションなどでマイナスにしかならないことは
周囲の大人たちもようようご存じで。
そのような小細工は結局損をするだけだと、
上質な演技を出来る子ほど、素地から素直でのびのびしているもの。
“まあその辺も周囲の大人に責任があるんでしょうけれど。”
躍起になって役を取れとか誰より目立てとせっつくステージママがくっついていては
結果としてろくなことにならない。
その辺りをちゃんと把握している劇団らしいので、
粒よりのいい子ばかりなんだと、その筋ではしっかり有名なのだがそれはともかく。
そんなところへ他のスタッフさんに手招きされて、
他の方へもご挨拶があるのでと、やはり穏やかにそうと話しかけてきた母上に連れられて、
小さな敦くんこと悠太くんはぺこりとお辞儀をし、そのまま場から離れてゆく。
ニッコリ笑顔で手を振ったものの、こそりと敦がつぶやいた声はやや萎れたそれで、
「悠太くん、これから…シグマさんと顔合わせですって。」
「そういや完全にシークレットだもんね。」
今回のお話の主軸、暁少年の実兄との何やかんやにとキャスティングされた
淡色髪の長身痩躯なお兄様。
来日していることは関係筋にも何とはなく知られているものの、
さすが本編開始まで完璧な秘匿を全う出来たスタッフ陣営で、
今回のスペシャルゲストに関してもきっちりと極秘扱いを貫いてる模様。
実は敦も、一番接点が多い役回りにもかかわらず、まだ顔合わせはしていないらしく、
「ボクとしては、前世の記憶だけじゃなくて、
兄様としても何も覚えてないというかご存じないんだろうっていうのが厳しいというか。」
何とも言い難い複雑そうな顔をする。
ああそっか、自分は一緒にいてくれているこちらのお兄さんたちに
同じような複雑な思いをさせてたんだなぁと、
そこはもうしみじみ思いが至っているし。
その上のものとして、
彼はそうじゃあないかもしれないけれど自分はただの役柄だけじゃあなく、
暁少年の半身としての記憶も持っているだけに
その辺りの欠落部分が寂しいというか複雑だというか。
「そういや、天界の記憶も持ってたんだな、敦は。」
この辺がまたややこしい仕様になってる坊やで。
むしろ、だからこそ…というか、そこでの悶着が根にあったが故、
異能を持ってた“前世”をなかなか思い出せなかったのらしいという順番だったらしく。
「…創作世界にも前世アリなんて、変な話ですけどね。」
「いやまあ、俺らもその“世界”に行った身だしなぁ。」
誰か個人(作者)の創作物、
架空の世界の最たるものじゃあないのかという感もあるが、実際に引っ張り込まれた身。
今居る世界と変わりない質感もあったし、そこにいた人々もそれぞれに意志持つ個体で、
行って帰れたことこそ奇跡というのじゃなかろうか。
とはいえ、もはや途轍もない人々から認識されている世界でもあって、
出入りが出来たことこそとんでもなく例外ながら、無いものとするのはこの場合難しかろう。
……ちなみに。
原作では、暁少年は槇の中将のところで“取り換え児の式”を施されて、
人格を入れ替えて霊力が薄まった精霊の子を神獣界へ戻す手はずになっていた。
鬼の系譜を授かっていたその霊力が強すぎて周囲からの反発が大きく、
はたまた自分の陣営に引っ張り込んで手駒にしようと企むようなよからぬ勢力もいたらしかったがため、
せめて自衛が出来るほどの技量や手腕を身につけさせようという
一応は穏当な手はずのつもりだったのだが、
次界を乗り越えるような仕儀をも運べるところを警戒されたか、
座標になるはずだった精霊の和子が行方不明になってしまい、
暁少年は戻るに戻れぬ身となってしまったらしい…という流れだったのだとか。
「その、行方不明になってしまった精霊の子ってのが敦なわけか。」
「そうみたいですね。」
二人とも暁くんだという解釈はややこしいので削除されたらしかったが、
“その子はどうなったんだって論争は起きなんだんだろうか?”
ですよねぇ。(う〜ん)
to be continued.(26.08.21.〜)
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*相変わらずややこしい設定なお話で、
酷暑に溶けかけの頭で整合性を詰めるのがなかなかむつかしい。(おいおい)
とりあえず“現世”でのご対面を前に、
ドキドキの収まらないらしい敦くんなのが、兄様がた同様に心配です。

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